ふもぱんの読書カード

読んだ本の引用+コメント集積所

リーダーでない人にも読んで欲しい『リーダーシップの旅』

2007年4月から会社で自分のチームをもつようになり、「リーダーシップって何だ?」という疑問と対峙しているときに読んだ本です。新卒入社3年目で自分のチームができると言われ、学生時代に部長や委員長のような経験も特になかったため、割りと必死でした。本書はいろいろと読んだリーダーシップ本の中でも、印象に残った一冊です。

リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)

リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)

 

この本は「リーダーシップ」が主題ですが、なかなか深いです。「自分はリーダーじゃないし、なりたいとも思わないから関係ない」という方にも関わります。私はこの本で、「フォロワーシップ」という考え方を知りました。リーダー(上司、プロジェクトリーダーなど)とフォロワー(部下、プロジェクトメンバーなど)は対の関係なのです。上下関係というより、単なる役割分担。

 

リーダーがイケてないと言う前に、自分はフォロワーとしての役割を果たしているだろうか? 部下が使えないと嘆く前に、上司としての役割を果たしているだろうか? そんな問いが生まれます。

 

また、詰まるところ本書は誰にでも関わる本です。なぜなら、自分という人間のリーダーは自分自身だからです。「株式会社 自分」のリーダー、経営者という前提で読んでみてもおもしろいのではないでしょうか。学者の方が書いているので、少しアカデミックな感じもしますが、新書ですし読みやすいです。

 

本の後半に集中しますが、気になった箇所を6つご紹介。前後関係の流れ上、ちょっと長めにとっています。

 

(1)<引用・要約>P.167

忙しいのは大きな絵が描けていないから ー金井ー

 アクティブ・ノンアクション(行動的な不行動)は経営の障害となり、リーダーシップへの旅を妨げもする。これに対峙される言葉「purposeful action(目的意識を伴う行動)」で、こちらは、エネルギーも満ちあふれているし、同時に集中力も高い状態を指す。

(中略)

 アクティブ・ノンアクションは、「できる人」たちの中に多い。スマントラたちの調査によれば、このタイプが実にマネジャー層では四割もいる。

 かつて、拙著『組織変革のビジョン』を出版してもらった時、本の帯に「忙しいから絵が描けないのではなく、描けないから忙しいだけだ」と添えてもらった。

組織変革のビジョン (光文社新書)

組織変革のビジョン (光文社新書)

この言葉もアクティブ・ノンアクションに関わる。多忙だと嘆くビジネスパーソンほど、大きな絵を描いたり、それをじっくり、必ず完遂するための集中力をもったりできない場合は多い。例えば、会社に顧客からクレームがあれば飛んでいく。しかし、クレームの出ない体制づくりという、より大きな絵が描けないままだと、いつまでたってもクレーム処理に追われることになる。

 このような状態を見て取った、前出のH・A・サイモンは、「悪貨が良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」になぞらえて「計画のグレシャムの法則」と名付けた。小さな意思決定が大きな意思決定を駆逐し、小さな意思決定のためのささやかな計画が、より長期を見越した戦略的な絵、グランドプランを作成する時間を奪ってしまうという意味だ。

</引用・要約>

まず「アクティブ・ノンアクション」というワードがドキっとします。一見気忙しく働いているようだけど、それは何も考えていないがゆえの結果で、大した成果に結びついていない、というような皮肉も感じます。

目の前のことに追われるあまり、本来大事なことを置き去りにしてしまっていないか? この問いは重要です。私も正直なところ、日々の仕事をこなすことに慣れてしまい、自分自身が今後どうしたいのか? を深く考えないままの時期がありました。考えなくても仕事がある、という状況がまた厄介なのですが・・。多忙の果てに、自分は何をやってきたんだろうと焦燥感を覚える前に、考える時間を定期的に確保したいものです。

 

(2)<引用・要約>P.169

人生が短いのではなく、その多くを浪費しているのだ。 ー金井ー

 私が想い起こすのは、哲学者セネカだ。セネカは「怠惰な多忙」という言葉を残した。その著書、邦訳でわずか50ページ足らずの『生の短さについて 他二篇』には、次のような警句が所狭しとちりばめられている。

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

  • われわれは短い時間をもっているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。……われわれは短い人生を受けているのではなく、われわれがそれを短くしているのである。……人生は使い方を知れば長い。
  • 諸君は永遠に生きられるかのように生きている。……充ち溢れる湯水でもつかうように諸君は時間を浪費している。
  • 結局は誰の意見も同じであるが、多忙な人間には何ごとも十分に成し遂げることは不可能である。……実際多忙な人にかぎって、生きること、すなわち良く生きることが最も稀である。また、生きることを学ぶことほどむずかしいことはない。……しかし、生きることは生涯をかけて学ぶべきことである。
  • どんな時間でも自分自身の必要のためにだけ用いる人、毎日毎日を最後の一日と決める人、このような人は明日を望むこともないし恐れることもない。
  • 過去を放棄するのが、多忙の者たちである。……多忙の人々にはただ現在の時だけが関わりを持ち、しかもそれは捉えることもできないほど短く、その短い時でさえも、方々に気の散っている彼らであるから、知らぬうちに取りさられてしまうのである。

 セネカが語る「怠惰な多忙」、スマントラが注目する「アクティブ・ノンアクション」の意味はもうお分かりだろう。現在を忙しくは生きているが、今やっていることの意味を探すような来し方の内省をせずに、過ぎ去る今日を集中力なく気が散るままにカラ元気で生きるのは、よしたほうがいいということだ。

 ここから二つの指針が生まれる。一つは、活動が過ぎる度に内省して、後付け、後知恵でもいいから、意味付けることだ。もう一つはモータリティ(mortality)つまりいつかは死ぬべき運命への深い自覚だ。

</引用・要約>

こちらも「怠惰な多忙」というワードが刺さります。

著者が提案している「内省による意味づけ」は、「四行日記」というもので数年実践しています。その日あった印象的な出来事を上げて、事実・気づき・教訓・宣言を書くというものです。

そこには「意味づけ力」が必要だなと感じますが、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。ずっと続けていると、潜在意識につながるものも出てきます。前反省したのに、またやっちゃった・・ということも実はありますが、「前反省したのに」という自覚があるか無いかも、結構大きいところです。やって損はありません。

一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方

一日5分奇跡を起こす4行日記―成功者になる!「未来日記」のつくり方

タイトルがちょっとスピリチュアルですが。笑

 

(3)<引用・要約>P.171

 五賢帝の一人にして哲人でもあったマルクス・アウレリウスの『自省録』を手にとって読んだことがあるだろうか。

自省録 (岩波文庫)

自省録 (岩波文庫)

 アウレリウス(ローマ皇帝)とは、政治リーダーであり、軍事リーダーであり、宗教のリーダーでもある。当然、大変多忙な人生を送った。それゆえアウレリウスは、己を振り返ること、内省することが大事だとすすめる。アウレリウスは、自分が世話になった一人一人の名前を挙げていき、その人たちから何を学んだかを克明に記している。

 J・L・バダラッコはこれらの哲学書をビジネスパーソンに読んでもらっている。

「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために

「決定的瞬間」の思考法―キャリアとリーダーシップを磨くために

バダラッコは、リーダーシップをとる人のキャリアや人生の決定的瞬間に深い関心を抱き、ただ忙しいふりをして、旗振りの声が大きいだけのリーダーではなく、静かにリードする人を称える。ビジネスとは、単に「忙しいこと(ビジー・ネス)」ではないのだ。

</引用・要約>

『自省録』は買ったものの、積ん読状態です。中身を紹介したいところですが、内省というのは得意不得意がわかれそうですので、内省の仕方という意味でヒントを得られないかな、と思っているところです。

 

(4)<引用・要約>P.192

知行合一を引き出し、支える意志の力 ー野田ー

(中略)リーダーシップの旅を始めるにあたって、最も必要なものは何かと問われれば、私は間違いなく意志力だと答える。(中略)スマントラ・ゴシャールは「ウィルパワー(willpower)」という概念で示した。

 なぜ意志の力、ウィルパワーが大切なのだろうか。

 組織や企業では、そしてマネジメントの世界では、人を動かす時にはモティベーションが重要だと言われる。しかし、創造と変革に挑み、不安とリスクに直面し、不確実な未来に向けて一歩を踏み出すためには、だれかに、または何かにモティベートされる(動機づけされる)だけでは足りない。外から与えられたものは、情況の変化の中で意味をなくしてしまうことが多いし、予期せぬ出来事に遭遇すると、自分を支えるものとしては、十分に機能しないからだ。

 外からのものではなく、自分の内面からわき上がるもの。心の奥底から踏み出したい、踏み出すんだ、後戻りせずに前へと歩き続けるんだという力が、行動を生み出し、支える。

(中略)

 私たちの身の回りには、様々な機会が広がっている。おかしいと思っていること。自分ならこうするのにと思うこと。こうすれば皆も喜ぶだろうな、社会にも役立てるだろうなと思うこと。それらを実現することは、現実を変え、新たな何かをつくり出すことを意味する。そうした機会に私たちは気づいていないわけではない。問題は、気づいていても自ら行動を起こさないことにある。

 知行合一を実現する意志力は、だれかに教わることはできない。上司が与えてくれるわけでもない。昇進やボーナスで動機づけられるものでもない。それは自分自身との真摯な対話からうまれてくる。

 自分は一体何がしたい人間なのだろうか。自分にとって現状を打破する仕事や挑戦は、どのぐらいの意味をもっているのだろうか。それを実現できたら、どういう気持ちになるだろうか。

 逆に、チャンスを見過ごし、着手さえしなかったら、後でどう感じるだろうか。悔やむだろうか。悔やむとしたら、どのぐらい悔やむだろうか。

 では、着手するとしたら、待ち受けている困難はどれほどのものだろうか。自分には、その困難を乗り越えるだけの心の準備と気構えがあるだろうか。それほどまでしてやり遂げたい仕事や挑戦なのだろうか。

 こうした自問自答を続け、頭(理性)だけでなく、心(感情)から納得した時、意志の力が生まれ、アクティブ・ノンアクションが克服されるとスマントラたちは言う。

</引用・要約>

外発的動機と内発的動機の話しですね。前職ではディレクションやチームマネジメントという役割が長かったこともあり、この点もうなずけるものでした。「○○してください」と指示することはできますが、それでは例外的なことに対応できなかったり、やる気がでなかったりするケースが多くなります。

もちろん緊急時には「○○してください」が必要なときもありますが、悩みや困り事など個人的なことや、複雑な仕事をお願いするときは、相手の口から「○○をします」という言葉を引き出した方がうまくいきます。うまくいかなかったとしても、相手にとっては自分で考えた結果の行動ゆえ、納得感が持てます。これが第三者からの指示だと納得しにくいのですよね。

上記のためには、根気と質問の力が必要になります。内省であれば、自分自身に質問する力ですね。

 

(5)<引用・要約>P.197

エキスキュート、とことんやり抜く ー金井ー

(中略)

 ウェルチ本人もしばしば研修所に赴いて、リーダーシップについて熱く語った。彼がリーダーにとって大切なものとして説くのは4つのE。すなわちエナジー(Energy)、エナジャイズ(Energize)、エッジ(Edge)、そしてエクスキュート(Execute)だ。

  1. エナジー(Energy):リーダー自身が活力や元気に満ちていること
  2. エナジャイズ(Energize):部下・フォロワーを鼓舞すること
  3. エッジ(Edge):崖っぷちでもゆるがないタフさがあること
  4. エクスキュート(Execute):やり抜くこと

 興味深いのは第四のEが登場した背景だ。当初は三つのEしかなかった。もう一つのEが加えられたのは、経営幹部評価の場で困惑するような発見があったからだ。それは、最初の三つのEつまりエネルギーもエナジャイズもエッジもよく備わっているのに、十分な成果を上げていない幹部がかなりいたという悩ましい発見だった。

(中略)

 思い切った決定やアクションまではできるのに、肝心な時にリーダーが逃げ出したら最悪だろう。決断し、アクションをとった後は、成果につながるまでやり抜く。この姿勢がリーダーには不可欠となる。

 ウェルチの薫陶を受けた元アライドシグナル社CEOのラリー・ボシディは自分のリーダーシップ論を著した本のタイトルを一言でExecution(『経営は「実行」』日本経済新聞社)と付けた。四つ目のEがいかに重要かをボシディは身にしみて分かっていたからだろう。

経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則

経営は「実行」―明日から結果を出す鉄則

 エクスキュートは普通、実行力や執行と訳されるが、「死刑を執行する」という時にも使われる。きれいな言葉で訳すより、「とことんやり抜く」もしくは「逃げない」の方が意味は伝わりやすい。ちなみに経営幹部を意味する「エグゼクティブ(executive)」とエクスキュートはもちろん同語源の言葉だ。経営幹部と呼ばれるからには、途中で逃げ出さずに最後までやり抜く使命を帯びていることが、あらかじめこれらの言葉には織り込まれている。

</引用・要約>

4つ目のEとして加えられたエクスキュート(やり抜くこと)のエピソードが気に留まったので引用してみました。ここで思い出すのは中谷彰宏さんの著書にあった言葉です。

 したい人、10000人。

 始める人、100人。

 続ける人、1人。

行動を続けられる人は10000人に1人ということですね。それだけ続けるのは難しいのだ、という例えです。まだ駆け出しではありますが、「したい人」→「始める人」→「続ける人」となるプロセスを支援する取り組みを今年から始めています。世間ではコーチングというのでしょうか。

言葉はさておき、完全に一人で行動を起こしたり、継続できる人はなかなかいないと思います。自分自身もそうですし・・。私は自分から支援するように動き始めましたが(一般にお節介と呼ぶ)、一方で、逆に支援してくれる仲間を集めるという行動も大事ですね。

 

(6)<引用・要約>P.276

 私たちは、人生において色々な力を「ギフト」としてもらっている。生まれつき両親から授かったものもあるし、努力してつかんだギフトもあるかもしれない。リーダーシップの旅を歩き続け、結果としてリーダーになった人はとてもたくさんのギフトをかち取っている。しかし、自分ではかち取ったと思っていても、その大部分は周囲の人たちの協力があってこそ、手に入ったものだ。それらのギフトは、人々の営みがつくり出す社会の上で花開き、育まれ、認められたものだ。

 ギフトというものには、世界共通の原則がある。

 もらったギフトは返さなくてはいけない、くれた相手にではなく、他の人や社会に対して返すという原則だ。

</引用・要約>

自分にとって当たり前の能力は、他人からすると当たり前でないことが多々あります。話しはずれるかもしれませんが、自分の能力を高め続けながらも、今ある力を求めている人のところへ自ら出向いていく、そんな姿勢も大事だなと最近考えています。

 

リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)

リーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)

ちなみに本書は、ウェブサービスで起業したい!と考えている人が読むべき15冊の本 -  ihayato.書店 でも触れられていました。イケダハヤトさんとしては、リーダーシップに関しては、本書と以下の『アルケミスト』を読んでおけば十分では、と書かれていました。なるほど。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

  • 作者: パウロコエーリョ,Paulo Coelho,山川紘矢,山川亜希子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
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